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腕輪

☆あらすじ

沙羅を育ててくれた老婆
彼女は死の直前で、一つの腕輪を渡し、沙羅の生い立ちを語り始める。


腕輪

「・・・これは・・・」
 震える手で、それを受け取った。
 それが何かすぐに解った・・・何を意味するのかも。
 だけど、それを受け入れたくなかったのだ。
 老婆は無言で、微笑んだ。
 痩せた体、
 もうすぐ訪れるであろう死を前にして、出来る事はそれだけだ・・・そう悟っていたのだ。
「・・・あたいの・・・あたいのせいだったんだ」
 唇をかみ締めても、溢れて来る涙を沙羅(しゃら)は止められなかった。
「・・・違うよ」
「違うもんか!!」
 優しく制止しようとした老婆の言葉を強く否定する。
 沙羅は手に置かれた腕輪を、苦い表情で握り締めた。
 細かい装飾がされている・・・そして、この国で知らぬものは居ない印が刻み込まれていた。
「赦空導王家の紋章」
 何故、ここにある?そして、今、自分に渡される?
 答えは一つしかないだろう。
「かあさん・・・あんたを殺したのは、あたいだ」
 項垂れた、どん底の中で、思わず、そんな言葉が漏れた。
「あたいが、居なかったら、こんな風に隠れて生きる必要なんてなかったのに・・・もっと自由に生きられたのに」
 悔しくて、悔しくて、ドロドロとしたものが胸の中をかき乱しているのを感じる。
「・・・こんな風に死んで行く必要だって無かったのに・・・」
 老婆は無言で首をふる。
 そして、懐かしそうに目を細めた。
「あたしがね・・・あんたを育てたのは半分、罪滅ぼしだと思っていたんだよ」
 老婆はかつて自分が李苑(りえん)という、側室の乳母であった事を話し始めた。
 今となっては面影も無い姿だが、本来、相当の教養のある女性だったのだろう。
「とても可愛らしい双子の姉弟だった・・・その子を自分が育てる事が出来る・・・本当にかけがえの無い時間だったよ」
 しかし、長くは続かなかったのだ。
 正室の妃の親族にあたる男に引き渡される事になったのだ。
「あんた達が冷遇されることは解りきった事だった、その男は双子であることを知らなかったのさ・・・だから」
 そこまで言いかけて、老婆は言葉を詰まらせた。
「・・・だから・・・」
 沙羅は目を伏せて、その意味を汲み取った。
「弟だけを引き渡して、かあさんはあたいを連れて逃げた・・・そうなんだろ?」
 老婆の目から涙が溢れた。そのやせ細った手を握り沙羅はただ、謝る事しか出来なかった。
「・・・だけど、あたいは、かあさんの子供で居られてよかった」
「しゃら・・・」
 老婆はかすれかすれの声で言葉を続ける・・・大きく見開かれた目だけは、その衰えた体とは不釣合いなほど、精気に満ちていた。
「決して、自分を見失ったらいけないよ・・・お前は生まれたときから王家という荷を背負っている、だけど」
 ひとつ大きく息をはく。
「お前は、お前だ・・・あたしがあんたを一人の娘として可愛がったように、いつか誰かがあんたを・・・」
 言いかけた言葉は最後まで言われる事は無かった。
「・・・かあさん?」
 信じられなかった、受け入れる事なんて、到底できない。
 しばらく呆然とした後、声を出して泣いた。

「許せない」
 手に握られた腕輪を顔を歪ませて見つめ、床に叩き付けた。
「こんなものがあるから、かあさんは!!」
 王家はずっと内乱が絶えていない・・・その戦の費用はどこからくるのか。
 国民の貧困は、回復はおろか、留まる事すらない、自分達の暮らしが決して、特別貧しいというわけではない事を沙羅は知っていた。
「・・・あたいが赦空導を滅ぼしてやる」
床に転がる腕輪が、まるで国そのもののように見えた。
恨めしい冷めた目で、それを見て、沙羅はそう決意したのだ。
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