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豺狼 二章、犬

 揚華が目覚めた時、そこは砂塵ではなかった。
 下は土だったが、屋根はある
 そういえば、おぼろながらに、男の家を見た気がする・・・そのあと力が抜けて
 そこから憶えていない。
 ゴン!
 額に衝撃が走った
「何をぼんやりしている」
 大男だ・・・投げられたものをみると、芋だった。
 衝動的に口に入れた、最後に物を食べてどれくらいになるだろう
 喉につまり咳き込んだ。
 中央の鍋で煮られている湯も少し飲んだ。
 とても食とは言えないものだったにせよ、なんとか落ち着いた揚華はその家をよく見回した
・・・今まで見た中でもっとも汚いものだった。
 そんな散乱した粗末な家に所々転がっている、
 高価な石や装飾品は、明らかに盗品だと確信できる。
「おい、こっちへ来い」
 そう言ったのは揚華にではなく犬にだ。
 よろよろと立った犬は主人の下へ歩みよって傍に座った。
 男は犬の頭を撫でながら言う。
「・・・実はな」
 それは揚華に向けられた言葉だったが、目は犬を見たままだ。
「さっきの芋は、こいつの餌だったんだ」
 ニヤリと笑う・・・先ほどの獰猛な目つきだ。
 揚華は嫌な予感がして思わず身構えた。
「ここに2人養う餌は無い・・・解るよな?」
 言い終わらないうちに、男は右に置いてあった鎌を振り上げ。
 傍にいた犬に振り下ろした。
「ヒッ!」
 思わず声にならない悲鳴が漏れた。
 犬の返り血が揚華にも飛んできて、一瞬、何もかも真っ白になる。
 どれくらいの間が過ぎたか解らない。
 は一言も発する事が無かった、即死だったのだろう。
「・・・・なんで」
 わなわなと肩が震えた。
「殺したんだよ・・・懐いてたじゃねーかよ」
「今、言った通りだ」
 男は何事も無かったように涼しげに言った。
「餌がない・・・あと、俺は犬は2頭、飼わねえんだ」
 男が笑いながら近づいてくる、足はすくんでいたが、揚華は悔しさをこらえ切れなかった。
「なら、なんで捨てないんだ・・・殺すなんて」
「ふん・・・」
 つまらなそうに鼻を鳴らした男は、次の瞬間、
 バン!
 揚華の腹を思い切り蹴飛ばした。
「ぐはぁ!」
 壁にぶつかり、うずくまる
「お前が、一番解ると思うんだがな」
 男は冷たく見下ろすと揚華の目の前に座った。
・・・壁と男に挟まれて、揚華には逃げ場がない。
 恐ろしかったが、揚華は目をそらさなかった。
「・・・その結末が、さっきのお前だ、弱って野垂れ死ぬ」
 薄ら笑いを浮かべた。
「お前の親の方がよほど酷いだろう」
 優しかった母の面影が過ぎった・・・酷いだと?
「違っ・・・」
「甘ったれてんじゃねー!」
 同時に左頬に強い衝撃が走った・・・拳だ。
 地面に叩き付けられる
・・・・うっ
 もはや立ち上がる気力もなかったが、揚華の頭は地面から浮いた。
 男が髪を掴んで持ち上げて居るのだ
「恩なんて思わなくていいぞ・・・犬を換えただけだからな」
 男は口元だけ笑った。
「お前の左目は役に立ちそうだ、これからよくしつけてやる」
「・・・この・・・豺狼が!!」
 声が震えていたが、折れたら何もかも捨てたもののような気がする。
 豺はやまいぬの事を言う、
 豺狼とは残酷で欲深い人。むごたらしいことをする人という意味だ。
 男は手を離し、揚華は床に顔から落ちた。
「どれだけ、強情なんだ」
 厭きれた風に言ってはいるが、顔は笑っている。
 その表情が揚華には憎くて仕方がなかった。
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