FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

豺狼 五章、答え

 豺狼が戻ってきた、
 男達は部屋の隅にそれぞれ隠れていたが、散乱した物が良い隠れ場所を作っていた。
・・・人を殺すのだ、揚華に緊張が無いわけではない
 先にあるのも約束された幸せではない
 だけど、もう、自分には耐えられないのだ。
「なんだ?」
 豺狼の様子はいつもと変わらない、冷たい目を揚華に向ける。
「沸かした湯があるから、少し飲みなよ」
「ほう?」
 豺狼は意外そうな顔をする、揚華は内面の焦りを顔に出さない
「いつもそうだからさ・・・ここの水は真水じゃ飲めないんだろ?」
「そうだ」
 汚い髭を触りながら、豺狼は言った。
「ただでさえ、雨が少ない場所だ、湧いて出てくる水なんてあるものか」
 豺狼は鍋の前に座る・・・椀を鍋の中に入れ、湯をすくう
 そして、口を・・・・
「揚華」
 必死で抑えていた胸が、悲鳴をあげそうだった。
 身動きこそしていないが、冷や汗が背中をつたった。
「表に出ろ」
 まだ、一口も口に含んでいない
「何をためらっている?いつもの事だろう」
 確かにその通りなのだ・・・だけど、今日は困る。
「・・・どうしたってんだ?」
 目が次第に険しくなっていく。
「待ってくれ!」
 揚華は豺狼の前でうずくまる。
「・・・・俺には、もう無理だ」
 押し留めるために言った言葉だったが、自然と言葉がでる。
・・・それが自身の本心でもあるんだろう
「あ?」
「体中が悲鳴をあげている・・・もう、お前の言う事は聞けない」
 目だけは豺狼を威嚇しているが、体のほうは動かなかった。
 今度こそ、自分は嬲り殺されるだろう、思わず身構えた。
 立ち上がっていた豺狼は、見下げたような表情を浮かべたが
 改めて座り直した。
「・・・もういい、出てけ」
「・・・え?」
 豺狼に表情はない、その表情は知っている猛獣のものではなかった。
「てめえは、自分の意思を曲げない・・・ソレだけが取り柄だ」
「何を・・・」
 今更・・・
「剣で生きていくには、もっとも必要なものだ・・・才能以上にな」
 豺狼は少し温くなってきた湯を眺めながら言う
「お前は、余計なもんを抱えて生きている」
 揚華は左目を抑えた・・・痛い目に合せた男だが、豺狼だけが、この目を恐れない
「おそらく生涯、忌み、避けられてゆくだろう」
「・・・・解ってるよ」
 誰よりも自分が解ってる・・・しかし、どうしていいのかも解らない
「甘えるんじゃねえよ・・・・誰もお前を守ってくれないぞ」
「!!」
 ビクッ!衝撃が走った・・・それは何よりも正しい言葉だったからだ
「誰の助けも無く、生きていけなければ・・・・」
 豺狼が言う。
「・・・お前は、一生、今のままなんだぞ!いいのか?」
「!!!」

・・・それこそが・・・
 目から、こぼれるものを押さえられなかった。
「・・・・嫌だ!!!」
 伏兵、罠、何もかも頭の中から飛んで真っ白になる。
「そうか・・・じゃあ」
 豺狼はニヤリと笑った。
「答えたら、置いてやる・・・敵は何人だ?」
「・・・・」
 この男は最初から、湯の匂いを嗅いだ際に、すべてを推察していたのだろう
「・・・・四人だ」
 搾り出すような小さい声の後、一斉に男達が飛び出してきた。

 後の事は、全く覚えていない、自分は泣き崩れたまま、中は戦場になった。
・・・もちろん、豺狼が負けるわけがない
 しかし、無抵抗だった揚華が何故、最後まで生きていたのか
 それは自身でも解らなかった。
「・・・お前なんかに」
 悔しくて・・・悔しくて、糸が切れたように感情がこみ上げて、どうすることもできない
「・・・なんで、お前なんかに」
 最も自分を酷に扱った人間に、最も己を理解されているのだ。
「いい加減にしろ」
 村人達は既に物言わぬ姿になってだいぶ経っていた。
「・・・なんで、俺は」
 手を顔に押し付けながら、必死で涙を止めようとする。
「悪い人なんて誰も居なかった・・・・なんで俺・・・」
「悪い人間だって?」
 豺狼が馬鹿にしたように笑った。
「悪い人間なんて居ない・・・・居るのは弱い人間だ」
 ゴワゴワした髪を掻き揚げながら、いつもの表情をみせる。
「お前も・・・こいつらもな、同じだ」
 俯いた揚華は、豺狼の足元を見つめていた・・・顔をあげられない
 ポチョン
「え!?」
 赤く落ちる雫が地面に落ち滲んだ・・・幾つも
 思わず見上げると豺狼の額に血が伝って流れている。
・・・嘘だ、最初の盗賊達よりも遥かに弱い相手だったのに!
 言葉を発せず目を見開いている揚華に向かって、豺狼は言った。
「弱い人間は邪魔だ・・・自分の身は自分で守れ」
 この男は、自分を守って居たんだ。
「・・・・なんで・・・」
「お前が、こいつらに加わって俺を殺すなら、俺はお前も殺していた・・・だがな」
 目が揚華に向き直る。
「言っただろう?置いてやると」
 惨たらしく襲い、忌み嫌われる・・・この男はそういう人間だ。
 だけど・・・
「・・・やっぱり」
 揚華は、思わず出そうになった言葉に慌ててひっこめる。
 この人だけが、唯一の自分の理解者なのだ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

風祭ともこ

Author:風祭ともこ

目次
更新
最新コメント
月別アーカイブ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。