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豺狼 七章、墓

「(・・・・そうだと思ってたよ)」
 揚華は倒れた豺狼の死体を見下ろしていた
 体中傷だらけで、惨たらしい・・・決して綺麗な死に様ではなかったが、どことなく、満足そうな表情をしていた。
 部屋の中にはもう一人居る、同じく体中、傷だらけだが、こちらは生きている
 入ったときから気づいていたが、揚華は驚かなかった。
「・・・俺も殺すつもりなのか」
 言うだけ言ってみたが、そうでないことは自分でも解っていた。
「こんな満身創痍で、できるわけがないでしょう?」
 見たことも無い、鮮やかな光沢のある着物、そして装飾された鎧
 どこから見ても、身分の高い人間なのは明らかだった。
「貴方の方こそ、さぞ私が憎いでしょうね」
 皮肉を込めて相手はいう。
「・・・いや」
 揚華の気持ちはいつも以上に冷静だ、
「実は別れは済ませていた・・・・こうなる気がしていたから」
 揚華は、死んだ豺狼を抱える。
「・・・何を!?」
 男は驚いた、揚華に刺され終える事を想定していたのかもしれないが、揚華にとって、そんなことはどうでもいいことだった
「墓を作るんだよ・・・家族をさらしておけるものか!」
 どれぐらい掛かっただろう
 日は沈んだまま、月が幾分か傾いた気がする。
・・・昼でもさほど暑くないこの場所で、夜の冷えは身に堪えるが、そんな感覚は、感情の前で、飛んでしまっていた。
 黙々と墓を作る
 男もそれをただ見つめていた。
「私が誰か、気にしないのですか?」
 歳は豺狼とそれほど変わらないのだろうが、
 身が整えられ、髭も剃られているので幾分若く見える。
「どこかの国の将軍・・・ってところか」
 興味なさげに揚華は言う。
「彼は・・・」
 男が静かに言った。
「王に忠誠を尽くしていた、よい武将だったのです」
「うん」
・・・朝の会話を思い出した。
「豺狼は犬が嫌いだと言ってたな・・・犬は主人に好意を持っていても、あくまで下の立場で命令に従うだけの生き物だと」
「聞くまでも無い・・・という雰囲気ですね」
 男は言う・・・育ちのよさと頭の良さが、雰囲気からにじみ出ている。
「ああ・・・」
 揚華は墓の前で手を合せる。
「豺狼は国の犬だったんだろ・・・そして、裏切られた」
「そうです」
 男は静かに揚華の横に座った。
「・・・・私に責任がありました・・・同じ立場にありながら、彼の濡れ衣を晴らせなかった」
 悲しげに俯いたが、涙を頬を伝ったのは揚華のほうだった。
 男はハッとしたが揚華の言葉を待っているようだった。
「・・・やっと、家族を・・・理解者を失ったって気がする」
 だいぶ経った間の後で、静かに男は「・・・そう」とだけ呟いた
「彼が荒くれものとして、村を襲っていることを知ったのはつい最近です」
 冷静に男は続けようとした。
「それを知ったとき、わたしは、改めて、自分の罪の重さを思い知りました」
 彼は階級の登り詰め、間逆の人生を歩んだのだろう。
「彼は私が止めなければならないと思いました・・・もしくは彼に殺されなくてはならない」
 その責任があるのだと彼は言う。
 豺狼も恐らく同じ心境だったのではないだろうか?
「豺狼のやっていることは、間違えてたよ・・・俺の今もそうだ・・・だけど」
 揚華は男に振り返る。
「だったら、アイツはどう生きれば良かった?裏切られたあいつは」
 胸に迫るものを感じる
・・・この気持ちは、そうだ・・・あの時と同じ
「誰とも関わらず生きていくにはどうしたらいい?そうせざるを得なかったんだ」
「それは違います!」
 核心に触れるように男は言う。
「彼には、貴方が居ました」
 力強く揚華を見つめる。
「貴方は彼をよく理解している・・・最後の数年でも、彼は幸せだったと私は確信しています」
・・・それはどうだろう?
 揚華には自信が無い、だが、自分が幸せだったのは本当だった。
 そう・・・だった
「・・・じゃあ・・・」
 揚華は呟いた。
「俺はどう生きればいいのか・・・これから」
 男は何か言おうとしていた、表情は暗くなかった・・・しかし
 揚華はボサボサの長い髪を掻き揚げた、隠れていた左目が明らかになる
「!!」
 ふいに見せられた、その醜い左目を見て、男は絶句した。
 揚華は口元だけ、かすかに笑う。
「・・・・だよな・・・」
 昔から知っていた・・・そして、事実だ。
「・・・俺は、人間の仲間になれない」
 男は冷静さを取り戻そうとしているようだったが、言葉など必要ない。
「豺狼・・・」
 揚華は墓の前で言った。
「俺はあんたのような生き方はしない・・・・」
 どう生きるべきか解らないけれど
「必ず見つける、あんたとは違う道を」
 揚華は男に背を向け部屋に入り必要最低限のものを袋につめる。
「ここに居ると厄介なのだろう?」
 揚華はそういい残して、その場を去る。
 男は何も言わず、ただ見送っていた。
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