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四章 仙 桃源郷

・・・・寂しくないか・・・ですって?
 愚問だ、若い娘がこんな場所で、楽しいわけが無い。
「余に問う何の意ありてか碧山に棲む」
 昨日の歌の一節を歌う。
 こんな場所に埋もれてしまうほど、自分は安くない。

 どうしたら、わたしはここから出られるかしら?
 もちろん、維邦の寵愛を受けたまま。

「・・・なら・・・」
 紅錦香は呟く、ならば、まずその父親の鴛鴦が邪魔だ。
 鴛鴦が死ねば、財産はすべて維邦の物になる。
 ・・・とはいえ、世間体を気にして、維邦は正妻を手放さないだろう。
 維邦が常に傍に置きたくなるような女にならなければならない。
 権力の源である正妻すら、追い出したくなるほどに。

「・・・・あら、貴方」
 維邦が帰ったのを見計らったかの方に、帝鴻が姿を現した。
 どことなく寂しそうに見える。
「ねえ、昨日から・・・ずっと見てたでしょ?」
 当てると、帝鴻はハッと顔を赤くした。
「気配で気づいたの、全く、人が悪いわね」
 からかうように笑うと、帝鴻は怒るのを必死で抑えるように呟く。
「・・・貴方は、本当にそれでいいのですか?」
「何を?」
 紅錦香はつまらなさそうに答える。
「私がここに居る目的、知ってるでしょ?」
「だけど貴女は・・・・」
 帝鴻は必死な目を向けた。
「貴女は彼のことを愛していない」
「私はね」
 紅錦香はつかさず答えた。
「誰かを好きになったことが一度も無いわ・・・だから何とも思わない」
 不敵な笑いを浮かべた。
「それよりも」
 紅錦香は警戒を強めながら言う。
「貴方は一体、何者なの?維邦様の使いではないのでしょう?」
「ええ」
 隠す様子は全く無かった。
「話す必要が無いなら、言うつもりも無かったのですが・・・」
 観念したように、帝鴻はため息をついた。
「奥様」
 朝げの片づけをした楊采が顔を出した。
 そういえば、楊采は帝鴻と会った事がない、この様子をみれば、さぞ驚くはず・・・・
「?」
「どうしました?奥様」
 心配そうに、楊采が顔を近づける。
「・・・・ねえ、ここに今、何人居るかしら」
 現状が解ったが、認めたくない。

「何を言っているんですか!わたしと奥様の二人だけでしょう?」
 困った顔で楊采が笑った。
「今更、人が恋しくなりましたか・・・あたしはやっと馴れて来たのに」
 ・・・・ああ・・・やっぱり、そうなのだ。
「解りましたか?」
 帝鴻は困り顔で言うが、紅錦香は納得がいかない。
 彼の頬を、髪を、体をペタペタと触り続けていた。
「・・・体があるのに・・・」
「幽霊ではありませんからね」
 帝鴻は微笑を浮かべた。
「私は仙人です」
「仙人?」
 それでは、さっきの維邦の話の続きではないか。
「言ったでしょう?ずっと昔から住んでいると」
 確かに、こんなみごとな場所ならば、神の領域のように思われる。
「あらあら、維邦様は本当に理想郷を手に入れちゃったってことなのね」
「それは少し違います」
 帝鴻はおだやかに微笑んだ。
「ここはただの入口です・・・本来の場所は、こんなものではありません」
 ・・・・え!?
「驚きましたか?」
「ええ・・・ねえ」
 不審感は拭えないが、それよりも今は興味の方が大きかった。
「そこに私を連れて行ってくれないかしら」
 帝鴻の表情が動いた。紅錦香は困ったように言う。
「だって私、本当に暇なのよ・・・このままじゃ死んじゃう」
「困りましたね」
 帝鴻は少し悩んだが、少しして、解りましたと承諾をした。
「入口を知られたくないので、目隠しをして・・・私が手を引きましょう」
 謎が多くて不審ではあるが、不思議と恐怖を感じさせない人物だ。
 紅錦香は頷く。
「・・・あと」
 帝鴻の目が、すこし恥ずかしそうに、紅錦香から外れた。
「貴女の名前を敬称なしで呼びたいのです・・・紅錦香と」
 紅錦香は笑った。大した用件でもない。
「解ったわ、帝鴻」
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