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七章 真珠玉 桃源郷

 維邦は、ゆらゆらと漂う様に河を下ってゆく。
 だんだん見覚えのある場所へ・・・まるで夢から現実に引き戻されるようだ。
「維邦!」
 帰ってくると、良く知っている女が出迎える。
「また遠方へのお勤めだったのですってね」
 大きな牡丹の花を髪に挿している、橙の着物がとても華やかだ。
「ああ、蓮久(れんきゅう)」
 蓮久と呼ばれた女は、ニコニコと嬉しそうだ。
「あら?」
 蓮久は維邦の肩に手を伸ばした。
「ピンクの花弁・・・」
 一瞬、維邦は、ドキリとしたが、妻である蓮久は気に留めなかった。
「梅?・・・それにはもう遅いわね」
「桃の花だよ」
 花などどこに行っても咲いている・・・何を怯えているのだろう。
 維邦は自分の後ろめたさを笑った。
「綺麗な牡丹だ」
 維邦は蓮久の髪の牡丹に触れる。
 ・・・ここまで見事に咲いた花を手折ったことが、なんだか惜しいと思う。
「あら、私の事は?」
 いじらしい妻の言葉に、維邦は笑う。
 しかし、紅錦香を知ってからの維邦は、お世辞を言う事に抵抗を感じるようになっていた。
 正直、牡丹も着物も地味な蓮久の前では全く映えない。
 衣装負けもいいところだ。
 彼女が美人で無いというわけではないのだが、あれだけの美女を見た後ではどうしても見劣りしてしまう。
「疲れたでしょう?今、着替えを・・・」
 と、蓮久は維邦の着物に手を伸ばす。
 ・・・触れた場所に違和感があった。
「あれ?・・・これは何?」
 丸くて硬い
 言われた維邦はハッとした。
「・・・・・」
 女の直感というべきか、何かただならないものを感じた蓮久はすぐに維邦の懐にあった真珠玉を取り出した。
「すごいわ!とても綺麗」
 うっとりと眺める蓮久を前に維邦は焦る。
 ・・・一番、見つかりたくない人物に見つけられてしまった。
「これで装飾品を作ったら、どんなに綺麗かしら・・・欲しいわ」
「これは駄目だ!」
 慌てて、それを奪い返す。
 愛人の大事な家宝を、妻の遊び道具にされたくない。
「どうしてよ!」
 蓮久は真っ赤になって怒った。
 裕福な家庭に生まれた彼女は、我慢というものをしたことがない。
 言えばなんでも手に入ったし、強く言えば誰でもいう事を聞く。
 維邦もまた、彼女にとっては、自分に逆らわない大人しい夫でしかなかった。
「・・・これは大事なものなんだ、諦めてくれ」
「嫌よ!!」
 ふて腐れた彼女は、怒鳴り散らす
「いいわ!お父様に話してやるんだから!!」
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