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八章 鴛鴦 桃源郷

 その翌日、案の定、維邦は鴛鴦に呼ばれた。
 鴛鴦は維邦たちが暮らす屋敷と少し離れた場所に愛犬を一匹飼い、共に暮らしている。
 一人が好きなのか?そうなった経緯は維邦にはわからない。
 普段自らは、恐れ多くて会いに行く事はない。
 それほどまで、権力があり鴛鴦がいう事は絶対で、親子となった今でも、威圧を感じるのだ。
「その・・・蓮久の事なのだが・・・」
 鴛鴦は、ため息混じりに話す。
 酷く疲れた様子だった、一晩、娘の泣き言につき合わされたのだろう。
 小犬がハッハッと言いながら、鴛鴦の周囲を駆け回っている。
 これ以上大きくなる事はないらしい。
 全体的に皮がダルダルと伸びていて、鼻が潰れたように低い、
 短い尻尾がブンブンと左右に動いている。
 ・・・可愛くない犬だ。
 最初から、維邦はそう思っているのだが、滅多にいない珍種らしく、鴛鴦は娘の次にこの犬を可愛がっていた。
 部屋を見渡すと、統一感の無い、装飾品や絵画が無数飾られている。
 見たことも無い、織物や皮など。いかにも貿易商人らしい。
 犬の含め、この家自体が、鴛鴦の宝箱のようなものなのかもしれない。
「聞けば、珍しい宝石を持っておるそうじゃな」
 しわがれた声、
 歳をとっても、ある程度のガタイのいい体とは対照的な、くぼんだ目元が、狸を連想させる。
 そんな風に昔から、維邦は思っていた。
「・・・はい・・・」
 観念した維邦は、懐から真珠玉を取り出した。鴛鴦がおお!と声を漏らした。
「見事な・・・」
「大事な友人から貰ったものなのです」
 懇願するように維邦は言った。
「・・・形見か?」
「いえ・・・ああ・・・そうですね」
 それくらいに大事なものだ。
 そうか、と鴛鴦はため息をついた。
「ならば、無理やり、奪うわけにも行かぬ」
 ずるそうな外見とは裏腹に、鴛鴦は聞き分け良く話す。
「・・・しかしな、これだけは分かってくれ」
 鴛鴦は維邦の目を見て話す。
「何故、蓮久があそこまでムキになるのか、あの子はお前の寵愛してくれないと嘆いておるのだ」
「・・・・蓮久がそんなことを?」
 維邦は驚いた。
 ・・・気付かせないよう気を配っていたつもりだったのに
「私は、そんな・・・」
「分かっておるよ」
 安心させるよう鴛鴦は力強く、うなづいた。
「気を引かせるため、着飾る・・・いじらしいではないか」
 鴛鴦は笑う。
「これは、蓮久にはやらぬ
・・・しかしながら、このような美しい玉をずっと隠すのでは勿体無い気がしてのう」
「・・・・はい」
「ここに飾っておくのはどうだろう、ここは重要な客しか通さぬし、常にワシが居る」
 つまりは、客人に見せびらかせたいのだ。
 ・・・・・狸め!
 維邦は心中、歯軋りする思いだったが、それを抑える。
「・・・・分かりました、義父様に従いましょう」
 確かにここは、常に鴛鴦が居る場所だ、下手に自分が持ち歩くよりも安全かもしれない。
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