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十一章 収穫 桃源郷

 維邦は、突然やってきた。
 はじめこそ、取り繕う風だったが、数週間の空白が無かったかのように
 変わらず、親身に接すると、とうとう、維邦の方が折れてきた。
「すまない!」
 膝をつき土下座する姿を、見て、紅錦香は驚いたふりをした。
「・・・どうされたのですか?」
「あの、真珠を・・・お前の家宝を、奪われてしまった」
 ・・・まあ、
 膝の力を抜き、倒れこむ・・・それを維邦は慌てて支えた。
「何があったのですか」
 震える声で言う。
 維邦は自問自答のように呟く
「渡すつもりなんてなかった・・・取り返そうともしたんだよ」
 その目は必死だ・・・どうか恨まないで欲しい・・・・そんな表情に見える。
「父が・・・鴛鴦が、商人に売り渡したんだ、私に黙って・・・」
 肩をわなわなと震わせている・・・紅錦香の反応が冷静なので。
 気持ちは、鴛鴦への怒りの方へ動きつつあるようだ。
「維邦様」
 紅錦香は維邦の目を見つめる。
「その売り渡したお金は?」
「船と交換したそうだ・・・暴額な価値をつけた者が居たらしい」
「そう・・・」
 紅錦香は少し考えた。
「維邦様は悪くありませんわ・・・ただ」
「・・・紅錦香・・・」
 維邦は安堵の表情を浮かべる。
「ただ、鴛鴦様を許す事はできません・・・あの玉は維邦様の物、維邦様の財産です」
 意志の強い瞳、彼女はハッキリと言った。
「鴛鴦様はそれを横取りしたのですから」
「・・・そうだ!」
 悔しさを滲ませて、維邦は呟く。
「・・・実は・・・」
 紅錦香は自分の懐から何かを出す。
 それを見て、維邦は唖然とした。
「宝は、一つではないのです」
 紅錦香の手には、二つの真珠玉
 ・・・それも、以前よりも大きなものだった。
「なんと!?」
「家宝は三つ・・・お話が遅れて申し訳ありませんでした」
 涙ながらに、紅錦香は言う。

「本当は、貴方と同じものを分かちたかったのです・・・なので、一つを維邦様に」
「おう・・・」
 その一言は、維邦を納得させるには十分だった。
「これを、維邦様に差し上げます」
 紅錦香は二つの玉を維邦に手渡した。
「いや、一つはお前が・・・」
「いえ、いいのです」
 強情にそれを突っぱねる。
「何故だ・・・分かちたいと言ったのはお前ではないか」
「はい・・・ですが」
 紅錦香は哀しそうに言う。
「その石の存在に、もし鴛鴦様が気づいたら、確実にまた、奪われてしまうでしょう」
「そんなことはさせない!」
 維邦は語尾を強めて言うが、紅錦香は首を振って答える。
「いいえ・・・人とは強欲な生き物です、一度上手い事があれば、それはまた訪れると考える」
「父上は、そこまで私を軽んじたりするものか・・・今度は絶対に」
 ・・・だから・・・
「ならば」
 紅錦香は笑う。
「試して見てはいかがでしょうか、わざと一つ、鴛鴦様の前に晒すのです」
 表情こそ微笑だが、内心は大いにほくそ笑む
「・・・なっ」
「鴛鴦様が、維邦様を重んじているのなら、二度目は奪うことはしないでしょう
本来あるべき親子関係です・・・ですが」
「ああ・・・」
 心中を維邦は察した。紅錦香はあえていう。
「それを奪う事・・・それは、貴方を道具としてしか見ていないという事です
・・・娘と結婚した使用人だと」
 紅錦香は、鴛鴦の手を握る。
「・・・そのときは、共に復讐をしましょう・・・私は鴛鴦様を許せないのです」
「・・・・・ああ」
 維邦はその手を握り返した。
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