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十六章 変死 桃源郷

 維邦は、それからまったく鴛鴦と顔を合せなかった。
 自分には多忙な仕事がある、ただでさえ家に居る時間はなかったし
 鴛鴦はあれから、維邦を恐れ、姿を見せようとしない。
 ・・・・会えば、返すよう催促されるとでも思っているのか?
 あれは自分の物だ、もう一つ持っているとは言え、とても腹立たしい。
 八つ当たりのように、使用人に厳しくする自分が居た。
 紅錦香に会いたい。
 あの場所こそが、自分の理想郷・・・癒される場所なのだ。
「維邦!」
 早朝、家に帰ると、蓮久が不安そうに出迎える。
「貴方・・・最近変よ、お父様も」
 一別し、自室に向かおうとする。
「待ってよ!!」
 それを蓮久は腕を掴んで止める。
「まるで、何かに憑かれているみたい・・・恐いわ」
 身を震わせて、泣く。
「お父様も、最近変なの・・・今朝は部屋からも出てきてくださらないし」
 ポロポロと涙をこぼす。その姿にさすがに同情を覚えた。
「わかった・・・私が様子を見てこよう」
 維邦は、鴛鴦の離れの屋敷を訪ねる。
「父上!」
 ドアを叩く、返事はない。
「あの事を怒っているのですか?」
 許すつもりはない・・・だが、自分は被害者だ。
 そのことで、自分は義父よりも強い立場に居る・・・そのことが維邦を後押しした。
「蓮久も心配しております・・・開けますよ」
 以前なら恐れ多くて開けることが出来なかった鴛鴦の屋敷のドアを、維邦は返事を待たずにあけた。
 ・・・・返事など返ってくる筈がなかった。
「なっ・・・」
 生臭い匂い。
 部屋のあちこちに飛び散る血痕。
 猛獣に食いちぎられたように、鴛鴦の五体はバラバラに散らばっていた。
 鴛鴦が逃げ惑ったのか、猛獣が暴れまわったのか。
 豪華な装飾品や家具などが無残に壊れて散らばっている。

 死体は醜かったが、血の色は鮮やかだった。
 ・・・恐らく、明けの頃、殺されたのだろう。
 その死体は、何故か血と灰にまみれていた。
 火を焚くような季節ではない・・・それは明らかに不自然だったが
 目の前の異常な光景からは、ほんのささやかな事のように思われた。
「あ・・・・ああ・・・」
 維邦と共に説得をしようと思ったのか、遅れてやってきた蓮久は声を震わせる。
 血色のない顔は一点を見つめ、膝からガクンと床に倒れこんだ。
「お・・・おとうさま・・・お父様!!」
 その様子に、幾分かの冷静さを取り戻した。維邦は、その場でクククと笑いをもらした。
 そうか、死んでしまったのか、鴛鴦は・・・
「手間が省けた・・・」
「え・・・」
 その言葉に蓮久はハッとした。
「罰が当たったのだ・・・俺のモノを盗み、俺を軽んじた」
 維邦は鴛鴦の懐を探る、あの石が欲しかった。
「・・・何を・・・」
 信じられない・・・鬼を見るような形相で、蓮久は叫ぶ。
「お父様が亡くなったのに!!なんで!!」
 維邦は嬉しそうだ・・・残酷な笑い声が恐ろしくて蓮久は体が動かなかった
「・・・なんで・・・だと」
 愚問だ。維邦は狂ったように叫んだ。
「あのじじいが死んで嬉しくない訳がない・・・すべては俺のものだ・・・俺の」
 鴛鴦の死体から衣類を剥ぎ取る、
 ドロドロとした血が、手や維邦の衣類を汚したが、維邦は全く気に留める様子がない
「どこに・・・どこに隠しやがった、あのじじい」
 必死で石を探すがどこにもない、腹立たしくなった維邦はその胴体を蹴飛ばした。
「やめて・・・やめてよぉ・・・」
 地獄に引きずりこまれたような光景に、蓮久はただ泣き伏せた。
 誰が、父を殺したのか・・・そんなことはもうどうでもいい。
 すべてを失った。父も夫も・・・それだけは確かだった。
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