FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

十八章 後悔 桃源郷

「帝鴻・・・」
 維邦が帰ってから、どれほど時間が過ぎただろう。
 力のない言葉で紅錦香は呟いた。
 きっともう自分は崑崙山には行けない。
 来年になれば、桃の花はまた美しく咲くのだろう。
 ・・・しかし、維邦の元へ嫁いだ後、再びここへ訪れる事はないだろう。
 そんな風に思う。

 維邦が居る間、帝鴻は全く姿を現さなかった。
 居なくなった後も・・・
「ねえ・・・出てきてよ」
 酷いわ・・・離さないでって言ったのに。
「・・・・居るんでしょ?」
 そう確信できた・・・あの人はずっと自分を見守っている。
 今まで、そうであったように・・・
「最後に、一度だけでいいの・・・」
 涙が溢れてきた、今までこんな気持ちのなることがなかった。
 こんなにも哀しい気持ちに・・・
「このままじゃ貴方を忘れられない・・・お願いよ」
 嗚咽を漏らして手で顔を覆うと、抱きしめる腕があった。
「・・・帝鴻」
 こんなにも、こんなにも懐かしい。
「さっきのも・・・全部見てたの?」
「・・・見れるわけがないでしょう」
 帝鴻は視線をそらし、俯いた・・・哀しそうな、きっと今の自分と同じ瞳。
「そう・・・」
 最も自分を愛していてくれる人・・・なのに。
「私、維邦の正妻になるの・・・」
「ええ」
「邪魔なものはすべて排除した・・・全部、計算通りだった」
「・・・・ええ」

 バシッ!

 力強く、紅錦香は、帝鴻の頬を殴った。
 愕然とする帝鴻の前で、紅錦香はかつてないほど、叫ぶ。
「何で止めてくれないの!?」
 気がふれてしまいそうな感情をどうして抑えられようものか。
「冷たい男!!私の事なんてどうでもいいの?」
「そんなはずがないでしょう!?」
 紅錦香の肩にまわした腕を、帝鴻は強く胸に抱きしめる。
「貴女の事だけを・・・ずっと、ずっと思い続けていて」
 帝鴻の温もりが伝わる、帝鴻もまた確かめるように抱きしめていた。
「だからこそ、地上で、本心を表に出せずに偽って立ち回る貴女を、見ていられなかった」
「ええ」
 紅錦香はうなづく。
「貴方のおかげで解ったわ・・・どれだけ私が」
 帝鴻の目を見る。
「着飾るだけの、さもしい女だったかと・・・金と権力に貪欲な、汚い女だったと」
「違う・・・」
 帝鴻は目を離さない。
「貴女の魅力は外見だけじゃない・・・強くて優しい人、それが貴女だ」
「ねえ、帝鴻」
 紅錦香は恐る恐る言う・・・本当は解ってる、だけど認めたくない。
「貴方はもう・・・会ってくれないの?」
「・・・・・・・」
 帝鴻は何も答えない・・・しばらくの沈黙の後、帝鴻は呟いた。
「わたしと貴女は生きる場所が違うんです・・・もう出会わない方がいい」
「嫌よ!!」
 叫ぶ
「だったら・・・今、殺して!!私を殺して」
 抱きしめられていなかったら、きっとその場に倒れこんでいただろう。
 帝鴻は腕を離さなかった。
「・・・だから」
 悔しそうに唇をかみ締める。
「ダメなんだ・・・このままでは、貴女も私もダメになってしまう」
 帝鴻は紅錦香の顔を見つめる。
「私は、貴女に人生を生き抜いて欲しい、貴方の命を手折るわけには行かないのです」
「・・・だけど」
 涙が止まらない。
「このままじゃ私、生きていないの・・・生きていないのよ!」
 昔、崑崙山で、二人で語った日の事を思い出す。
「私・・・あの時言ったわ、”人生を妥協なんてしないわ、悔いなんて、絶対に残さない”って」
「・・・ええ」
 懐かしそうに帝鴻が微笑んだ。その微笑がつらい。
「わたしの今の願いは、叶わない・・・一生・・・叶わない」
 何も解らなかった、子供だった自分・・・もう、道は引き返せない。
「・・・・私は・・・・人を愛する事を今更、知ってしまったんだわ」
 胸に顔を埋める・・・遅すぎる。
「私は、貴方に・・・」
 体の力が抜ける・・・ずるずると体が下がってゆく。
「出会わなければ良かった・・・その方が、幸せだった」
 愕然とした表情で、帝鴻は一点を見つめた。
 その一言は、何よりも言われたくない言葉だっただろう。
 ・・・だけど・・・本音だ。
「人を陥れることしか知らない、馬鹿で居れば。
・・・・こんな・・・こんな、悲しい別れをしなくて済んだのに」
 苦しい・・・苦しいわ。
 私はもう、生きていけない・・・この人が居ないと・・・私は
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

風祭ともこ

Author:風祭ともこ

目次
更新
最新コメント
月別アーカイブ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。